風の聖痕-紅炎の御子
本作の、原作との最大の相違点は、原作は八神和麻を主人公とし客観描写であるが、コミック版ではヒロインの神凪綾乃を主人公とし主観描写となっていることである。この視点をどこに置くかというのは非常に難しく書き手としても迷うところであり、加えれば、いったん客観視で描かれたものを主観でリライトすることは難しい(逆はもっと難しい。なぜなら「主観だから同時並行で起きている書けないこと」は、あとで「種明かし」的に書かれるか省かれるので、時系列を考えたり「起きているはずのこと」も考える必要がでてくる。)。
あとがきでは、原作者の山門氏が「原作通りで(中略)別物の様な新鮮さ」と絶賛し、何故当時の自分が和麻を主人公にしようと思ったのか、とまで書いています。このあたりは、主人公の八神和麻が本心を示さない謎の経歴を持っていることなど、ヒロイン視点が向いていると言う好条件もあったと言え見事でしょう。
ただ、限界もあり、敵の「星と叡智の名の下に‥‥‥」という文言に和麻が反応してしまう理由の描写が原作を読んでいないとわからない、などは散見されてしまいます。このあたりが、メディアミックス作品の限界かも知れません。
ストーリーは、最強の炎術師の家系である神凪宗家に、炎術の才能を持たなかった為放逐された神凪和麻が、風の精霊王と直接契約した最強の風術師(コントラクター)として名を八神と替え姿を現す。折しも、神凪分家が正体不明の風術師に襲われ次々に落命していた。正体不明の敵風術師は和麻か?(1巻)。 謎の風術師に兄たちを殺された分家の娘、大神操が妖魔を操り、数多の一般人を手に掛ける事態が発生。事態を収拾する為に操を取り押さえようとする神凪を和麻は妨害する。操を操る者は? そして、和麻の真意は?(2巻)。
原作の山門氏は、白血病系の病にかかり、骨髄移植をするも定着に失敗。2009年7月に病没され、原作は長編6冊・短編集6冊で未完で終えた。没後に出版された短編集「風の聖痕Ignition 6 ヒミツノカンケイ」には、最期まで書こうとされた長編7巻のラフが収録されている。今後、コミック・原作とも入手は困難になると思われる。